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偶然の音楽/ポール・オースター著 柴田元幸 訳
偶然の音楽/ポール・オースター著 柴田元幸 訳_a0016447_2302312.jpg偶然と言う言葉の意味するもの。
それはとても孤独で、それ以外何ら理由を必要としません。
全ての偶発的な出来事は、『偶然』の一言で、こと足りてしまうのです。
言わば人生なんて、そんなもの。

…そんなもの?

私は何にでも必ず理由があるのではないかと妄想していました。
そして向い風に立って、それを信じようとしていた気がします。
理由がある理由を、躍起になって捜していた気がするのです。
ところがこの小説の中盤で、主人公のナッシュは、相棒のポッツィに、
「…お前はつまり、何か隠された目的ってものを信じたがってる。この世で起きることにはちゃんと理由があるはずだって信じ込もうとしてる。神、運、調和、何て呼ぼうとおんなじさ。そんなのは事実を避けるための寝言さ。物事の真の姿から目をそらす手段なだけさ」
とのたまいます。
私は一緒になって、何かの制裁を受けている気がしました。
でも、そう信じた彼の行く末は…?

物語のなかで、残念ながら真理の答えは明確にされてはいませんが、
それゆえに、読者には100の、1000の、10000の答えが用意されています。
彼(オースター)は、罪作りなほどにお茶を濁すのが巧いです。
ですから私は、そんなラストも容易に想像できましたが、
そこで絶望的になるのはオカド違いってものです。
物語が劇的なほど、読者に与えるパルスは大きいはずですので。

とりあえず、面白いので是非読んでみて下さい。
by naho929 | 2004-09-07 02:42 |
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